自院に合ったスタイルで、飼い主とスタッフの満足度を両立するには

動物病院における「診療スタイル」は、診療効率だけでなく、飼い主の満足度やスタッフの働きやすさにも大きく関わる重要なテーマです。
近年では、待ち時間の短縮や感染症対策の観点から「予約制」を導入する動きが進んでいますが、一方で「予約があると来づらい」という声も根強く、判断に迷う病院も少なくありません。

本記事では、「予約制」「非予約制」それぞれのメリット・課題を比較しながら、近年注目されている“ハイブリッド方式”についても紹介します。
自院に合った診療スタイルをどう選び、どのように導入していくべきか――そのヒントをお届けします。

はじめに:なぜ今、診療スタイルの見直しが必要なのか?

近年、動物病院を取り巻く環境は大きく変化しています。飼い主のライフスタイルや価値観の多様化に伴い、

「待ち時間のストレスを減らしたい」
「できるだけ他の動物と接触せずに診察を受けたい」
「急な症状にもすぐ対応してほしい」

といったニーズが高まっています。

一方、動物病院側も人手不足や診療の高度化、感染症対策など、多くの課題を抱える中で、「限られたリソースで最大限の診療満足をどう実現するか」が問われる時代となりました。

こうした背景のもと、診療スタイル(予約制/非予約制)の見直しは、単なる運営手法の変更ではなく、病院のブランド価値や飼い主との信頼関係を左右する重要な経営判断になりつつあります。

本記事では、予約制と非予約制、それぞれの利点と課題を比較し、近年注目されている「ハイブリッド方式」の可能性についても詳しくご紹介します。

予約制のメリットと課題

「待ち時間を減らしたい」「予定を立てて通院したい」という飼い主の声を受けて、近年、動物病院でも予約制の導入が広がっています。特にコロナ禍をきっかけに、接触機会の分散や待合室の混雑回避の観点から、時間単位で診療をコントロールできる運用が重視されるようになりました。

とはいえ、実際に診療スタイルの変更を検討している経営者の中には、
「今まで予約なしで気軽に来てくれていた患者さんが、予約制になったら離れてしまうのでは?」
と不安を感じる先生も少なくありません。

これはごく自然な懸念であり、実際に予約制には明確なメリットがある一方で、導入の際には“既存の患者層との関係をどう維持するか”が非常に重要なポイントとなります。

メリット

  • 待ち時間の短縮による飼い主満足度の向上
    事前の症状把握や時間配分が可能になるため、獣医師が落ち着いて診療でき、対応ミスや過剰な残業も防げます。
  • 診療の質と効率が向上
    事前の症状把握や時間配分が可能になるため、獣医師が落ち着いて診療でき、対応ミスや過剰な残業も防げます。
  • 感染症対策の実施がしやすい
    来院人数の分散が可能なため、院内の密を避けた安全な診療環境を保ちやすくなります。
  • 人員配置・業務の見通しが立てやすい
    来院の見込みが立つことで、スタッフの業務分担や準備対応が計画的になります。

課題

  • 急患対応の柔軟性が下がる
    予約枠がすでに埋まっている場合、急な症状に対応しきれないケースが発生します。
  • キャンセル・遅刻によるロス
    突然のキャンセルや遅延により、空き時間ができてしまうリスクも。リマインドシステムの導入やキャンセルポリシーが必要です。
  • 一見さん(新規患者)が入りづらくなる可能性
    「予約が必要」と知って尻込みする飼い主もいるため、敷居が高くなりすぎない運用設計が求められます。

 非予約制のメリットと課題

予約制の導入が進む一方で、「非予約制(来院順)」を維持している動物病院も依然として多くあります。特に地域密着型の病院や、日々の症例数が流動的な施設では、非予約制が機能しているケースも少なくありません。

実際、「急に調子が悪くなったので今すぐ診てほしい」という声に柔軟に応えられることは、非予約制ならではの大きな魅力です。
また、これまで長年非予約制でやってきた病院にとっては、「予約が必要」というハードルを設けないことで、気軽に立ち寄れる安心感を提供してきたという自負もあるでしょう。

  • 急患対応に強い柔軟性
    症状が急変した動物に対して、即座に対応できる診療体制は、飼い主にとっても大きな安心材料となります。
  • “いつでも受け入れてくれる”という信頼感の醸成
    とくに高齢の飼い主や、予約が苦手な層にとって、非予約制の気軽さは来院を後押しする要素になります。
  • 新規患者の受け入れハードルが低い
    「とりあえず一度相談してみよう」というライトな来院動機を受け止めやすく、リピーターにつながるチャンスも広がります。

課題

  •   混雑時の待ち時間・順番トラブル
     ピークタイムには1〜2時間待ちになることもあり、飼い主の不満やキャンセルにつながる恐れがあります。
  • スタッフの業務負担が読めない/偏る
     来院が集中すると受付・問診・会計・補助などが一気に重なり、現場が混乱しやすくなります。
  • 感染症リスクの管理が難しい
     来院が集中しやすいため、待合室での接触やストレス増加が避けづらくなります。

特に現場スタッフからは、
「急患が続いて昼休みが取れなかった」
「午前の混雑が午後の手術に響くことがある」
といった声も聞かれ、体力的にも精神的にもハードワークになっている現状があります。

非予約制は、“地域のかかりつけ”としての信頼感を支えてきた診療スタイルでもあり、無理に変えるべきではない場合もあります。ただし、現場が無理をして支えている仕組みになっていないか、一度立ち止まって見直すことも必要かもしれません。

ハイブリッド方式という選択肢

予約制と非予約制、それぞれにメリットと課題があることを見てきました。では、「どちらか一方を選ばなければならない」のか?
答えはNOです。

近年、両者の利点を活かし、弱点を補い合う形として注目されているのが「ハイブリッド方式」です。これは、予約制を基本としながらも、一定の柔軟性を持って当日診療や急患対応を組み込む診療スタイルで、動物病院においても導入事例が増えています。

ハイブリッド運用の一例

  • 予約優先+当日枠あり
     → 基本は予約制でスムーズに運用しながら、毎日数枠は「当日枠」として開放。急患や予約なしの飼い主にも対応できる体制。
  • 診療内容による使い分け
     → 予防医療(ワクチン、フィラリア、定期健診など)は予約制に、突発症状(下痢、嘔吐、皮膚トラブルなど)は非予約対応に。
  • 時間帯で分離
     → 午前診療は予約制、午後はフリー診療というように、時間帯で受付スタイルを分ける運用。

ハイブリッド方式のメリット

  • 診療の計画性と柔軟性を両立
     一定の予約枠で流れを作りながら、急患も断らず対応できるため、飼い主の安心感が高まります。
  • 既存の患者層を取りこぼさない
     「気軽に来られる」安心感は維持しつつ、「待たせない」診療スタイルも提供できるため、患者離れのリスクを抑えられます。
  • スタッフの業務負担が分散できる
     来院数の見通しがある程度立つことで、現場の段取りや心構えも変わり、働きやすさにもつながります。

 カギは「自院に合った診療様式」と「柔軟な予約システムの活用」

ハイブリッド運用は万能ではなく、診療に出られる獣医師の人数や看護師の体制、さらには地域性や患者層の特徴に応じて最適な形は異なります。

大切なのは、「自院の規模・診療能力に合った様式を選ぶこと」、そして、「そのスタイルを支える柔軟な予約システムを導入すること」です。
最近では、時間帯別予約や当日枠管理、キャンセル通知などに対応したクラウド型予約ツールも増えており、少人数運営の動物病院でも十分に活用できます。

 導入時のチェックポイント

診療スタイルの見直しや、予約制・ハイブリッド方式の導入を検討する際には、単にシステムを導入するだけでは不十分です。
スムーズな運用と患者満足の両立には、いくつかの準備と確認が必要です。

自院の現状を正しく把握する

まずは、現在の診療体制や課題を客観的に振り返ることから始めましょう。

  • 獣医師・看護師の人数と勤務体制
  • 来院のピーク時間帯や曜日
  • 診療件数の平均とばらつき
  • 飼い主からのフィードバック

こうした情報をもとに、「どこに予約枠を設けるか」「どの部分を非予約にするか」など、運用設計を現実的に考えることができます。

スタッフ間の合意と役割分担

予約制を導入する際には、現場のスタッフが「どのように運用するのか」を十分に理解し、納得していることが重要です。

  • 誰が予約を管理するか
  • 当日来院への対応ルール
  • キャンセル・遅刻時の対処方針

あらかじめ業務フローを可視化し、ロールプレイやミーティングを通じて共通認識を持つことが成功の鍵となります。

飼い主への丁寧な周知・案内

診療スタイルの変更は、飼い主にとっても大きな変化です。突然の切り替えは混乱を招くため、以下のような段階的・丁寧なコミュニケーションが求められます。

  • 院内掲示や公式LINE、SNSでの事前案内
  • 「予約不要枠もあります」「急患は随時対応可能です」といった柔らかい表現
  • 新システム導入後のフォロー(受付での説明、Webマニュアルなど)

予約システムの選定とテスト導入

最近では、動物病院向けに設計された予約管理システムも多く、以下のような機能がチェックポイントになります。

  • 時間帯別・診療内容別の管理
  • 当日枠やキャンセル待ち機能
  • 自動リマインド通知
  • スマホ・LINE連携の有無

可能であれば小さな枠からテスト導入し、徐々に予約枠を拡大していくことで、現場の混乱を最小限に抑えることができます。

まとめ:自院に最適な診療体制とは?

動物病院における診療スタイル――「予約制」か「非予約制」か、はたまた「ハイブリッド方式」か。
その答えは一つではなく、病院の規模、診療スタッフの数、地域性、患者層の特性によって最適な形は変わります。

本記事でお伝えしてきたように、予約制には計画性・効率性・待ち時間の短縮といった大きなメリットがある一方で、非予約制には柔軟性や地域密着の強みがあり、 ハイブリッド方式はその両者の良さを活かすバランス型の選択肢です。

特に近年では、「感染対策」や「スタッフの働きやすさ」「予約管理のデジタル化」といった観点からも、運営スタイルの見直しが求められるようになってきました。

とはいえ、無理に最新の仕組みを取り入れる必要はありません。
大切なのは、“自院にとってのベストバランス”を見つけること。

  • いまの体制でどこに無理があるか?
  • 飼い主の声にどう応えていくか?
  • 院内スタッフの負担をどう減らせるか?

これらの問いを一つずつ丁寧に見つめ直し、段階的に改善していくことが、結果的に患者満足とスタッフ満足の両立につながります。

 最後に

診療スタイルの見直しは、単なる受付方法の変更ではなく、病院の“あり方”を見直す機会でもあります。

まずは小さな一歩から。
例えば「週に1日だけ予約制を試してみる。」「混雑時間帯だけ整理券方式にする。」といった取り組みでも十分です。

変化は一気に起こすのではなく、“ちょうどよい変化”を、院内みんなで作っていくことが成功の鍵です。

ご案内:予約システムの導入をご検討の方へ

当院では、動物病院向けクラウド予約システム「Wonder」を開発する株式会社ワンダーテクノロジーズと提携し、導入支援を行っております。

Wonderは、

  • 診療内容に応じて、時間・担当獣医師を柔軟に設定可能
    症例ごとに予約枠を細かくカスタマイズできるため、診療の質と効率を両立できます。
  • 誰でも直感的に使える操作性と、LINE予約の手軽さ
    管理画面はGoogleカレンダーのようなデザインで院内スタッフもすぐに習得可能。
    飼い主様は普段使っているLINEから簡単に予約・確認・変更ができ、アプリ不要でスムーズに使い始められます。
  • 専任担当が導入から定着までを徹底サポート
    スタッフ向け説明・患者様への案内まで、手厚くサポートするので安心です。
    Wonderは、現場の声から生まれた“動物病院専用”の予約システムです。
    「自院にも合うか知りたい」「一度話を聞いてみたい」など、お気軽に以下のフォームよりお問い合わせください。
    送信後、PolarisVetよりご連絡させていただきます。