若齢犬における外傷性耳道閉鎖症例とその外科的対応
〜アニマルック3αを活用した術後評価〜 

はじめに:若齢犬の耳道異常とその対応の重要性 

若齢期に発見される耳道の異常はまれであり、特に閉鎖症例では診断および外科的対応のいずれにも高度な判断が求められます。

今回ご紹介するのは、Polaris Vetにて対応いたしました3か月齢のトイプードルに発生した外傷性耳道閉鎖の症例です。
手術における工夫や、術後評価として活用した動物用ビデオトスコープ「アニマルック3α」の実際の所見をご報告いたします。

症例概要 

動物種・品種:犬(トイプードル) 

性別・年齢:未去勢雄、3か月齢 

体重・BCS:2.5kg、BCS 2 

主訴:右耳の外耳孔が確認できない 

2025年2月初旬、ブリーダー様より「右耳の孔がない」とのご相談でご依頼主の病院へ来院されました。
診察の結果、右耳外耳孔に重度の狭窄を認めましたが、一般状態には問題はありませんでした。

原因としては、同居犬による咬傷が過去にあり、それに起因した耳道の裂傷とのことでした。
同月下旬には、耳道部に疼痛および排膿を伴う裂開を確認し、創部の洗浄とCT検査が実施されました。 

手術内容と工夫点

閉鎖部は垂直耳道の中腹において軟骨が円錐状に収束し、完全に閉鎖されておりました。
このため、通常の外側耳道切除術における皮膚反転操作は困難でした。 

  • 外側耳道皮膚を切開・剥離し、水平耳道の輪状軟骨を同定し開口 
  • 垂直耳道の盲端部を背腹方向に切開し、新たに耳道を形成 
  • 新たに形成した耳道を、開口した水平耳道の背側および腹側皮膚とそれぞれ縫合 
  • 腹側には排液板を設置 
  • 縫合後、オトスコープを用いて耳道内の観察および洗浄を実施 

このように、一般的な術式をベースとしながら、症例に応じた柔軟な対応を行いました。 

術後評価におけるアニマルック3αの活用

術後の耳道深部評価には、アニマルック3αを活用いたしました。 
深部は膿が重度に溜まっており、本機器で観察しながら洗浄を行なっています。 

以下は洗浄後の耳道深部の所見です(生食で満たされています)。 
本機器により、耳道深部の構造を鮮明に観察することが可能となり、深部の汚れの確認、炎症の状況、感染兆候の有無など耳道処置および診断ツールとして有用であることを改めて実感いたしました。 

水平耳道深部の壁は重度に炎症を起こし、出血しています。また、鼓膜の構造は破綻していました。 

術後管理と今後の展望 

  • 感染予防として術後は抗生剤を継続的に使用 
  • 顔面神経障害のリスクをご説明し、術後には経過によっては角膜保護のため点眼を併用 
  • 若齢動物での手術のため、成長に伴う耳道の変化にも注意が必要 
  • 生後7か月齢頃まで、定期的な経過観察を予定 

術後経過

心配していた縫合部の離開や神経症状も現れることなく、術創はしっかり癒合してくれました。
耳道内部も通気性が良くなり、乾燥した状況が保たれています。
耳道開口部が移設されているため、どうしても耳道周囲が被毛で覆われやすくなっていますので、定期的に毛刈りなどを行い管理する必要はありそうですが、耳道内部の衛生環境はだいぶ改善が認められました。 

考察とまとめ

本症例は、外傷により耳道が閉鎖されたという稀なケースでしたが、術式の工夫と慎重な術後管理により良好な結果が得られました。

また、アニマルック3αによる術後評価は、耳道内の詳細な構造を視認するうえで大変有用であり、術後の管理方針決定にも寄与いたしました。 

アニマルック3αについて 

アニマルック3αは、動物専用に開発されたビデオトスコープで、耳道や口腔、鼻腔などの観察に優れた視認性を提供いたします。
コンパクトで取り回しがしやすく、診察・手術・術後フォローアップまで幅広く活用できる機器です。

また、USBでPCに接続するだけですぐに活用でき、日々の診察室内での耳道観察においても、飼い主様に簡単に耳の状況を説明できるツールとして活用いただけます。 

Polaris Vetでも日常的に使用しており、特に耳科領域の診療において高い有用性を感じております。 

こちらの製品はPolaris Vetにて取り扱っておりますので、ご興味のある動物病院様はお気軽にお問い合わせください。