長管骨骨折整復のための確認ポイントを解説します。

今回は、動物病院の診療において度々みられる長管骨骨折について、その手術計画を立てる上で重要な『確認ポイント』を簡単に解説していこうと思います。

長管骨骨折でも特に、橈尺骨骨折、大腿骨骨折を中心に長管骨の骨折整復をする上で、事前に確認しておきたいキーポイントをお話ししたいと思います。

※ケガをした部位の写真が出てきますので苦手な方は閲覧にご注意ください。

渡邉獣医師

渡邉史恩 獣医師
貴院における『武器となる外科技能の確立』を目指した出張外科サービスを提供いたします。

初めに(事前計画の重要性)

整形外科に関して、苦手意識を強く持っている先生も多いかと思います。

器具の導入にも費用はかかる…

勤務医時代では勤務先の方針や環境などによっては執刀経験が得られづらい…

このような事情が原因にあるかもしれません。
そして何より、

「思っていたのと違った」

という状況に、手術を始めてから直面することも多く、

「想定外の状況があったらどうしよう。。。」

と不安になることも大きな要因となるかもしれません。
実際、「想定通りでした!」なんて例の方が、少ないかもしれません。

つまり、骨折の整復において最も重要なことは

事前計画!!

これに尽きるかと思います。

手術自体のスキルも大事ではありますが、術後の失敗の大半は、この「事前計画」の段階での

  • インプラントの選択ミス
  • 固定強度の計画ミス
  • 設置位置の計画ミス

だったりします。

手術を行う前にCT検査などを行えれば、より正確な評価が行えるかもしれませんが、コストや時間の問題があり、そこまで実施できない症例も多々あります。
そうなると、

「もしかしたら、想定とは違う問題があるかもしれない」

を織り込み済みで、それにも対応できるような事前準備をしておく必要が出てきます。

自分の手札にどのような整復方法があるのか

まず、具体的な整復計画を立てる前に、自分の手札の中にどのような整復手段があるのか?
を把握しておく必要があります。

そして、その整復方法に最低限必要な条件などをしっかり理解しておく必要があります。

あえてここでは、一般論としての整復手段ではなく、「自分の手札の中に」と範囲を限定的にしています。

というのも、自分の手持ちの機材や固定器具での「物理的な限界」や自分の「能力的な限界」が存在する場合があるからです。 少なくとも自院で対応するもの、専門医に任せるものの判断を素早く行える能力は重要なスキルと言えます。

骨折を分析・評価する

ここからが本題ですが、骨折症例に遭遇したら、次のようなポイントを確認しましょう。

4つのポイント

  • 年齢
  • 解放骨折の有無
  • 骨折の部位
  • 骨折の形態
  • 年齢
    生後6ヶ月未満かそれ以降かが判断の分かれ目になります。
    成長期の子犬・子猫は仮骨旺盛で骨のリモデリングが早いため、早期に癒合しますが、骨折の整復処置までの時間がかかると、整復手術が困難になりますので早急な対応が必要になります。
    高齢の犬猫は、逆に骨癒合が遅くなりますので、癒合不全のリスクが高まります。
  • 解放骨折の有無
    骨が皮膚を貫いて露出している、もしくは露出した後戻った形跡がある(皮膚に裂傷がある)。
    分類としてその程度の重症度からⅠ〜Ⅲ型に分類されます。

    Ⅰ型:1cm以下の小さな裂傷。鋭利な骨折端が皮膚を貫通してすぐに戻った状態。
       橈尺骨・脛骨骨折では注意。猫では大腿骨骨折でも起こり得ます。
    Ⅱ型:1cm以上の裂傷。中程度の軟部組織損傷。
    Ⅲ型:広範囲の皮膚の剥離。重度の軟部組織損傷。

    Ⅰ型の場合は6~7時間以内であればしっかり洗浄すればインプラントも可能な場合もあります。
    しかし、基本的には解放骨折に対して髄内ピン、プレート、外固定はタブーとなります。
    ほとんどの場合、徹底した洗浄とデブリードを行い創外固定による整復を行います。

    過去に設置したプレート近位で骨折し、紹介された症例
     
    骨折端が皮膚を貫通し、裂傷を形成。24時間以上経過していたため創外固定適応となりました。

    術後2ヶ月
  • 骨折の部位
    骨幹部、骨端・骨幹端部、関節内 の骨折どの部位にあるかで骨折の難易度が大きく変わります。
    骨幹部骨折は比較的治療が行いやすいですが、関節に近いほど難易度が高くなります。
    特にプレートを設置する場合などでは、骨片にプレートを設置するだけの長さがあるのか?骨幅は十分にあるのか?などが焦点となってきます。

    転載:AO法による犬と猫の骨折治療

    骨幅が無い中手骨骨折のため、髄内ピンによるdowel法+外固定で整復した症例(以下写真)

    6ヶ月未満の脛骨近位での骨折。(以下写真)
    プレート設置が困難であるため、クロスピン+外固定にて整復。
       
  • 骨折の形態
    骨折の形態には大きく2つに分けられます。
    ・不完全骨折:片側の皮質骨のみ連続性が失われる。若木骨折や亀裂骨折など
    ・完全骨折:骨の連続性が完全に失われる。骨幹部骨折と骨端部骨折でも難易度が変わる。

    4ヶ月齢トイプードルの若木骨折(直後と4週間後)

    不完全骨折の場合は、ギプスなどでの外固定で整復できてしまうことも多いですが、骨折端同士が大きくずれているような完全骨折では、手術による整復が必要になることがほとんどです。

    その中でも完全骨折は骨片の数によって骨折の名称が変わります。
    細かい分類の詳細は、今回は割愛致しますが、簡易度の違いは理解しておくと良いでしょう。

    ・横骨折<斜・螺旋骨折<楔形骨折<粉砕骨折
    ・骨幹部骨折<関節外骨折<関節内骨折

    このような順で難易度が高くなると言われています。

整復計画に必要なデータを集める

骨折の分類と評価が行えたら次に行うのが、自分の手札で対応可能であるかどうかの判断です。

一次病院ではここの判断が一番大事かと思います。
自院で対応するべきか。二次病院に紹介するべきか。

どこまでは自院で対応し、どこからは紹介とするのかの線引きは、患者様へのホスピタリティにも、今後の病院の経営にも大いに影響してきます。

Polaris Vetでは出張での整形外科にも対応しております。 ご紹介いただく際に、どのようなデータを確認する必要があるのかを踏まえて紹介します。

Polaris Vetでは橈尺骨骨折や大腿骨骨折など長管骨の骨折整復には以下のような固定法で対応することが多いです。

  • コンベンショナルプレート
  • ロッキングプレート(Polaris Vetの場合はFixinロッキングシステム)
  • 創外固定システム(Polaris Vetの場合はIMEX創外固定システム)
  • 外固定

これらを組み合わせたり、髄内ピンやワイヤーなどを併用したりすることもあります。

これらの選択肢の中で、治療法を考えるにあたり、考慮しないといけないことがあります。
それは、手札の中のインプラントが設置できるのか?という点です。

プレートの設置における条件として以下のような基本ルールがあります。

プレートの設置における基本ルール

  • 閉鎖骨折であること
  • プレートを当てるだけ骨長、骨幅があること
    • スクリュー径は骨幅の40%未満(25〜30%)
    • スクリューは最低でも片側2本4皮質以上(可能な限り3本は設置)
    • スクリューは骨折線から少なくとも5mm離す
    • プレート幅は骨幅を超えない(理想は70 %程度)

これを満たせない状態でのプレート設置はリスクが高まるため、別の方法を考えるか、固定強度を増すために、他の固定方を組み合わせる必要があるかもしれません。

創外固定の場合も同様に、片側の骨片に最低でも2本のピンを設置する必要がありますが、プレートよりは多少融通が効きます。リニアシステムでは、プレートと同様に骨軸に沿ってピンを設置する必要があるため、骨片にそれなりの骨長が必要ですが、サーキュラー型やハイブリッド型では骨片の長さが短い症例でも対応が可能です。

また、斜骨折の長さや骨片の数なんかでも、プレートの長さをどうするか、サークラージワイヤーを用意するか、ラグスクリューを組み合わせるかなどの判断が変わってきます。

つまり、具体的なインプラントの設置をイメージした各部位の計測が必要になります。

単純な橈尺骨骨折を例に見ると

  • 骨折線から関節(もしくは骨端板)までの距離を2方向像で
  • インプラント設置範囲における「設置面の骨幅」
    特に最も狭い部位
  • 入れるスクリューの長さの目安となる、骨径(骨の厚み)
  • 正常側の2方向レントゲン像
患肢AP
正常肢AP
正常肢側方

最低でも、これらの計測データは計画を立てる上で必要となります。
忘れられがちなのが、正常側のレントゲン写真撮影です。これは整復完了後のモデルにもなりますので2次病院へ紹介する前などにも必ず撮影するようにしてください。

あとは、必要に応じて、さらに角度をつけた3方向でのレントゲンやCTなどを行う場合もあります。

ご依頼に際して共有いただくデータ

Polaris Vetでは出張外科サービスの中で骨折整復に関するご相談も承っております。
ご相談の際は、以下のデータの共有をお願いいたします。

  • 患肢の2方向のレントゲンデータおよび正常側の2方向レントゲンデータ
  • 可能であればIDOMデータの提出をお願いいたします。
  • 骨折線から関節(もしくは骨端板)までの距離
  • インプラント設置面の骨幅(最も狭い箇所を含む複数箇所)
  • 骨径(厚み)

※②〜④はDICOMデータをお送りいただければ、Polaris Vetで計測いたしますが、対応可能かどうかのご返答までにお時間を頂戴してしまうため、お急ぎで対応可能かどうかの返答をご希望の場合は、スクリーンショットやスマホでの画面撮影でも構いませんので、②〜④のデータを共有いただけたらと思います。

ご共有いただいた骨折の状況次第では、2次病院でのご対応を推奨する場合もございますが、まずは、自院で受け入れ可能な範囲であるがどうかの判断も含めて、お気軽にご相談いただけたらと思います。

出張外科をご希望の病院様へ

以下のボタンより出張外科ページをご覧いただき、依頼フォームより必要項目をご入力の上、送信してください。
2〜3営業日以内に返信させていただきます。

※飼い主様で手術ご希望の場合は、かかりつけ病院様からお問い合わせいただくように担当の獣医師にお伝えください。